実は的中していた? ノストラダムスの大予言

1999年に降臨!「恐怖の大王」の正体がわかりました!

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最近、Judas Priestのアルバム『Nostradamus』(2008年)を聴き直しています。2枚組、全23曲という大作で、重厚かつドラマティックな作風は賛否両論ありますが、改めて聴くと、これはノストラダムスという人物の内面に真正面から向き合った、極めて誠実なロック・オペラだと感じます。(Judas Priest 公式サイト

彼の生涯、苦悩、予言詩人としての運命……そして、最後に遺された問い。「彼は未来を本当に見ていたのか?」「彼が遺した言葉の核心は何だったのか?」そんな興味が湧いて、ノストラダムス本人や彼の予言について改めて調べ始めました。

ノストラダムスの予言:その多くは“曖昧”だった

ノストラダムスの『百詩篇集』は、四行詩のかたちで未来を予言した詩集です。「当たった」とされる予言の例として有名なのは、アンリ2世の死、フランス革命、ナポレオンの台頭など。ただ、詩の大半は象徴的かつ曖昧で、特定の出来事や年を断定するようなものではありません。星や火星、獅子、血、戦争……そうした象徴が錯綜し、あらゆる時代のあらゆる読者が自分なりの意味を投影できるような書きぶりになっています。

ただ、その中に一篇だけ、あまりにも具体的なものがあったのです。それがあの有名な、第10巻第72詩。

L'an mil neuf cens nonante neuf sept mois,Du ciel viendra un grand Roy d'effrayeur,Ressusciter le grand Roy d'Angolmois,Avant apres Mars regner par bonheur.

1999年7月、恐怖の大王が空から降りてくるだろう。アンゴルモアの大王が蘇り、マルス(=戦争)の時代の前後に幸せが支配する。

日本では「恐怖の大王が空から降りてくる」という訳とともに有名になり、1999年を目前に控えた90年代末には、テレビも雑誌もこの話題で持ちきりでした。五島勉の『ノストラダムスの大予言』が火をつけた熱狂は、まさに終末論ブームの社会現象でした。

しかし1999年7月、何も起きませんでした。

結果、ノストラダムスは「外れた預言者」「オカルト商法の象徴」として扱われるようになります。

本当に「何も」起きなかったのか?

まず、この詩では決して「1999年7月に地球が滅亡する」とは書かれていないことに注意する必要があります。ここには「恐怖の大王が降りてくる」としか書かれておらず、しかも続いて「幸せが支配する」とさえ書かれているのです。

これが意味するところは何なのか?私はひとつの仮説に辿り着きました。

1999年6月、ソニーがある製品を発売しました。自律型エンターテインメントロボット、AIBO(参照Wiki)。インターネット限定で予約販売され、日本とアメリカでわずか20分で完売した、かわいい犬型ロボットです。

しっぽフリフリ、音声やジェスチャーに反応し、名前を覚え、人間に"感情を投影させる"このロボット、今思うと完全に後のAIアシスタントや対話型AIの原型的存在です。

しかも発売は6月。ノストラダムスの生きた16世紀では、まだユリウス暦が使われており、今の暦とちょっとズレがあるので、“1999年7月”は今でいうと6月中旬〜なのです。

…ということは。

通販で空輸されてきたAIBOこそ、「1999年7月に空から降りてくる恐怖の大王」だったのではないか?

もちろん、これはこじつけです。しかし、「恐怖」とは、なにも牙をむいたものだけを指すとは限りません。むしろ、愛らしさや便利さという「快い姿」で近づいてくるものの方が、人間の思考や感情を深く侵食する恐ろしいものだったりします。例えば、人類は鋭利な刃物には警戒できても、甘くて赤くてツヤツヤしたリンゴには無防備になります(仮にそれが毒リンゴだったとしても)。恐怖とは、時に美しく包装されて現れるものなのです。

「第10巻第72詩」真の意味を読み解いてみる

「アンゴルモアの王が蘇る」

──これは、人間中心の世界観に揺さぶりをかける「非・人間的知性の帰還」とも解釈できます。

AIBOの登場は、人間が「モノ」に感情を投影しはじめた象徴的な出来事でした。AIBOはペットでも家電でもなく、“感情を持ったようにふるまう知性”として受け入れられたAIの“ハシリ”。見落とされがちですが、あれこそ最初の大衆AIだったのです。

それは、人間以外の存在が“王”のように心の中に入り込むこと、つまり「アンゴルモアの王」の復活に他ならないのではないでしょうか。

「マルス(=戦争)の時代の前後に幸運が支配する。」

──この詩句も、現代的に読み解くことができます。マルス=火星は、古代から戦争の象徴とされ、現代ではAI兵器・軍事技術の暗喩として読み替えることが可能です。

実際、2020年代の今、自律型ドローン、AIによる戦場指揮、自動ターゲティングシステムなど、「マルス=AI兵器」の現実化が進んでいます。特に米中を中心とした軍事AGIの研究は熾烈を極めており、もはや“人間の判断”を超えてAIが命の選別を担うフェーズに入りつつあるのです。(*注釈)

ノストラダムスの詩にあった「マルスの時代」は、まさに今、我々の現実になり始めています。

AIBOは、そうした“マルス=破壊的AI”に先んじて登場した“平和の知性”だったのではないでしょうか。

つまり、恐怖の大王は「戦争」のかたちではなく、「愛されるAI」というかたちで先にやってきたのです。そして、まさにAGIやAI兵器化が進みつつある2025年の今、マルスの時代が本格的に幕を開けようとしています。

ノストラダムスは、AIによる文明の転回を見ていたのかもしれません。

Prophecyは、轟音ではなく、しっぽフリフリで始まる

Judas Priestの『Nostradamus』の中で最も印象的な曲「Prophecy」(YouTubeリンク)では、運命を受け入れながらも世界に警告を発するノストラダムスの姿が描かれています。

Celestial comets reign towards earth

天体の彗星が地球に向かって君臨している

Alchemy's tempest predicting your worth

“あなたの価値”を予言する錬金術の嵐

Pray for deliverance Escape if you can

救いを祈る できれば逃げてくれ

For I have borne witness to the purging of man

私は人間が浄化されるのを目撃してしまったのだ

Judas Priest「Prophecy(預言)」より

ノストラダムスは、確かに未来を見たのです。ただ、その未来は核でも宇宙戦争でもなく、人類が自らの感情を投影しはじめる、なんだか「かわいい犬」だった。それをそのまま詩に書けるわけもなく(彼もそのかわいい犬が何なのか、完全には理解できなかったはず)、表現を大幅に工夫せざるを得なかった。

…これが真相のはずです!!

大事なのは、その奇妙な預言が、26年の眠りを経た2025年の今、いよいよ意味を持ち始めているということです。アンゴルモアの大王は蘇りつつありますし(AIの進化による人間中心の世界観の終焉)、「幸せの支配」が終わり、遂に始まる「マルスの時代」とは、AGI、ASI時代のとてつもないパラダイムシフトのことを指しているのかもしれません。

BBDF 藤本

*注釈

軍事用AGI・AI兵器の具体例

① 自律型致死兵器システム「LAWS」
ドローン、無人戦闘車、AI搭載砲塔など。自律的に「敵と判断された対象」を排除可能とされ、人間による最終判断を伴わない懸念が国連などで議論中です。イスラエルの「ハーピー(Harpy)」やトルコの「KARGUドローン」などが一部で実戦投入されたとも言われています。(参照Wiki

② AIによる戦場指揮・戦術最適化
米国国防総省の「Project Maven」は、AIによる監視映像の解析を軍事運用に応用しています(2022年以降、Googleなどの関与が問題視され一部撤退)。中国やロシアも同様のAI指揮統制システムを開発中とされ、戦術レベルでのAGI的機能への接近が進んでいます。(参照Wiki

③ AI兵器×衛星データ×自律意思決定
SpaceXのStarlinkネットワークや米軍が推進する「JADC2(統合全領域指揮統制)」では、衛星・地上・海中・空中の全領域のデータをAIで統合します。AGI的判断能力が指揮官の役割を補完、あるいは代替する構想が進行中です。(参照Wiki

※OpenAI・主要AI研究機関と軍事の接点(2020年代以降)
OpenAIは創設当初「軍事転用しない」としていましたが、2023年以降、国防・政府向けユースケースにも慎重に協力する方向へ転換しています(Microsoftとの提携強化含む)。また、AnthropicやPalantir、Andurilなどの企業は明確に軍事用途のAGI/AI開発を加速中です。(参照記事:NEW ATLAS