今やAIによる業務効率化や意思決定の迅速化は目覚ましいものがありますが、実はこのスピードアップの種は、AIが爆発的に普及する「前段階」ですでに蒔かれていたのではないかというのが、私の考えです。
ターニングポイントは「新型コロナ禍」だった
AIによる「実務」のスピード向上は技術の進歩によるものですが、「意思決定」のスピード化に関しては、新型コロナウイルスによるパンデミックが大きな転換点になったと私は見ています。
今日(4/1)も関東では大きな地震がありましたが、私たちはコロナ禍を経て、「明日何が起こるかわからない」「世界は必ずしも直線的には進まない」という不確実性を身をもって知りました。いわゆるBANI(脆弱で、不安で、非線形的で、理解不能な)時代の到来を、全人類が同時に突きつけられたのです。
その結果、「いつかやろう」ではなく「今日できることは今日やっておく」という意識が人々の間に芽生えました。このマインドセットの変化こそが、意思決定のスピードを一気に加速させた理由だと考えているのです。
数字が証明する「10倍」のスピードアップ
この意思決定の加速を裏付ける、興味深いデータがあります。
- iPhone(2007年発売):ユーザー数1億人到達まで、約2年
- ChatGPT(2022年ローンチ):ユーザー数1億人到達まで、わずか2か月
もちろん、ハードウェアとソフトウェア、あるいは有償無償といった条件の差はあります。しかし、この「10倍以上」という普及速度の差は、技術の差というよりも、新しいものを受け入れ、導入を決断する私たちの「意思決定スピード」そのものが、ChatGPT登場以前(コロナ直後)の段階で既に跳ね上がっていたことを示しています。
この加速した土壌に、AIという強力なエンジンが加わったのが現在の状況なのです。
AIとの共進化で「20~30倍」の世界へ
先日、あるAI開発者の方のお話をお伺いした際、「AIによって自分の業務スピードは20〜30倍になった」と仰っていました。
実はこれは、私自身の体感値とも完全に一致します。私は、直近の40日間で3冊目となる書籍を4/14に出版する予定です(1冊目:3/5発売、2冊目:3/18発売、3冊目:4/14発売)。本来の私の能力では、1年に1〜2冊書くのが限界でした。しかし、AIと共進化(Co-evolution)することで、かつての限界を軽々と超えることが可能になっているのです。
計算上は「1年に20〜30冊」出すことも不可能ではないことになります。まさに開発者の方が言った「20〜30倍」という数字と符合する世界が、実際に来ているのです。私がそれを、現実に体感中です。
「AIを使わない」という選択肢が日本全体を停滞させる
東京大学の松尾豊教授の試算によれば、中小企業を含めたAI活用率を80%に高め、メイン業務を10〜20%削減できれば、それだけで日本の実質GDPを年率1.3%押し上げる効果があるとのことです。現在の成長率が0.5%程度であることを考えれば、これは驚異的なインパクトです。
ここで重要なのは「中小企業を含めた80%」という数字です。
「うちはアナログだから」「AIはまだ早い」というスタンスは、一見こだわりがあるように見えますが、厳しい言い方をすれば、日本全体の経済成長に寄与しない選択をしていることと同義なのです。
AIは、人類史上最大の「汎用技術(GPT)」であり、蒸気機関や電気といった過去のそれらに匹敵、いや凌駕するイノベーションであることは疑いようがありません。これを活用しない手はもはや私たちにはないのです。
「一生勉強、一生研鑽」とは
世の中のスピードがこれほどまでに速まっている今、私たちは常に自分自身をアップデートし続ける必要があります。
「もうこれでいい」と思った瞬間に、人間×AIの共進化の道は閉ざされてしまいます。目まぐるしく変わる時代の中で、AIを相棒に据え、ひたすら突っ込んでいく。もう、これしか日本再興の道はありません。これこそが「一生勉強、一生研鑽」というものです。これ以上、チャンスを逃すわけにはいきません、我が国は。
人間×AI共進化ストラテジスト/HRアーキテクト
藤本英樹(BBDF)

