去る7月3日(木)、東京・永田町の星陵会館にて開催した“リアルな対話型イベント”が、無事に終了いたしました。「リアル会場オンリー&有料」という、時流に逆らう攻めたスタイルにも関わらず、たくさんの方にご来場いただき、本当にありがとうございました。
「AGI時代到来!人間はどう備えるべきか -技術革新の先にある人間の知性と創造性-」
2025年7月3日(木)@星陵会館
主催:BBドライビングフォース株式会社
共催:PwCコンサルティング合同会社

※開始前の様子
手作り感たっぷりの運営で、私の稚拙な仕切りによりいくつかトラブルも発生しましたが、それも含めて「人間にしか出せないライブ感」としてお届けできたのではないかと思っています。
まずは、参加した皆さまから寄せられた多くの感想メール(当日アンケートを取り忘れてしまったのですが、後日たくさんのメッセージをいただきました。感謝です!)の中から、いくつか抜粋して紹介させてください。
皆さまから寄せられた感想(抜粋)
💡気づきや学びがあった!
- AI時代を生き抜くことについて考える、良いきっかけになりました👍
- とても勉強になりました。これからのAIとの共生や人間としての時間の使い方、AIネイティブ世代の感性など、多くの視点を頂きました!
- 学びが多く、イベント全体としても楽しかったです。AI→AGI→ASIになったら、電力や環境問題はどうなるんだろう?
- 奥野先生の講義も聞けて、子供の教育についてもヒントをいただけました。ありがとうございました!
- とても目覚めのある、人間とは何かを問う太宰治以上の内容でした❣️
🧠心に残ったポイント・印象的だった言葉
- アーティストの方々が「ゼロイチは無い」と断言していたのが印象的でした。ゼロイチが苦手だった自分にとって、救われる思いでした。
- 技術革新と、人間との共存、葛藤、価値観に訴えるものの本質を考えさせられました。
- AI進化の中で、教育をどうするかは今も悩み中です。次回もぜひ参加させていただきたいです。
- フィジカルAIの話、興味深かったです。物理的な体験を通じてAIが「理解」するなら、人間を超えるのも時間の問題かも…?
🎨登壇者の話が良かった!
- 川嶋さんが凄かった!
- 特に施井さんの話は、わかりやすく共感することが多かったです。
- 奥野先生の講義も聞けて、子供の教育についてもヒントをいただけました。ありがとうございました!
- 奥深くて楽しいイベントでした。開催してくださり、ありがとうございました。
😊その他のコメント・エピソード
- 資料があれば復習したいです。可能な範囲でご共有ください!
- 一緒に来た友人が「めっちゃよかった」と興奮してました(笑)
- 超面白かったです!
- 楽しかったです!!
- 会場の空調がちょっと寒かったけど、それも含めて忘れられない夜になりました(笑)
- 藤本さんが途中でグダグダになっていくのが面白かったです(笑)
- ありがとうございました!友人も「楽しかった」と満足そうでした。
皆さんのおかげで、心に残る素晴らしい夜になりました。あらためて、ありがとうございました!
開催の背景と想い
AIが私たちの仕事や生活に大きなインパクトを与えるのは、もはや確実です。にもかかわらず、多くの人がその進化に対して受け身であり、十分な備えができていない……。そんな漠然とした危機感を、私はずっと抱いてきました。 (参考ブログ:2025年4月15日「AGIは準備万端。一方人間は、丸腰。」)
人間がもっと主体的に、「進化するAIとどう共存していくのか」を考えていかないと、このままでは「AIに使われる側」になってしまうのではないか。ユヴァル・ノア・ハラリの言う“無用者階級”に転落してしまう未来が、現実味を帯びてきているように思えたのです。
一昨年ごろから、AI関連書籍が次々に出版され、関連セミナーも乱立するようになりました。実際に参加してみると、それらの多くが商品の販促やサービス紹介に終始している(それが悪いというわけではありません)。ただ私はもっと、純粋に「AIと人間がどう共進化するか」を思索しあえるイベントがあったらいいのに……そう思うようになっていました。 そして最終的に、「ないなら自分で企画するしかない」と腹をくくったわけです。
そんな折、今年1月から受講した東大・松尾研主催の講座「AI Business Insights」で、PwCの奥野和弘先生の講義に出会いました。 生成AIをビジネスの視点でどう活用するかというテーマでしたが、宇宙物理学修士でアートにも精通する奥野先生の語りは、“AI導入エキスパート”という肩書きにとどまらず、哲学、人間学、そして美学に通じる問いを内包していました。
「AIを人間に寄与する存在にするためには、人間がもっと内省的に、自身を深く理解する必要がある」
「競合との差別化は、パーパス=美意識にある。アウトプットに美意識が乗っているかを、今こそ問うべきだ」
「人間は右脳をさぼってきた。本来、仕事は左右の脳をバランスよく動かすべきだ」
「究極的には、“人間力”を高めていくことが最も重要だ」
これらの言葉が深く心に刺さり、迷うことなく奥野先生にご登壇をお願いしました。
そこからさらに、35年以上にわたり世界を舞台に活動し、哲学や歴史にも精通した音楽家・SIGHの川嶋未来さん、 そして、美術家でありながらブロックチェーン技術で文化芸術の未来を切り拓く起業家・スタートバーン代表の施井泰平さんにもお声がけし、快諾をいただきました。
こうして、まさかの「体格ブラザーズ」(もしくは“Breaking Down出場者”?笑)が、この日ひとつの場所に集結することとなったのです。

当日の内容
🎤 イントロダクション(BBDF藤本)
冒頭では、私から「AIの知能が人間を上回る」とはどういうことなのか?という問いを投げかけました。 地球上には「頭の良い」動物が数多く存在します。人間との差はわずかであるにも関わらず、人間はこれまで「最も知能の高い存在」として世界を牽引してきました。
しかし、今後登場するAGI(汎用人工知能)や、さらにその先にあるASI(人工超知能)が人間の知性を凌駕するとしたら、人類の知的優位性や支配構造はどう変わっていくのか?そして、これからの人間の「役割」はどうあるべきなのか?そんな問いから、セミナーはスタートしました。

そこからは、AIによる「新結合」=イノベーションの可能性についてお話しました。 一時ブームとなった「ジブリ風画像」がなぜすぐに飽きられたのか? 単なる模倣の限界とは?そして、その先にある「人間の好き」や「問い」から生まれる新結合こそが、宇宙的スケールのエネルギーを持ち得るのではないか?と提案しました。(参考ブログ:5月2日「『ジブリ風』の次に来るのは『シュンペーター』?」)

最後に、1930年にイギリスの経済学者ケインズが残した予言に触れました。
「100年後の人間は、野に咲く百合のような存在になる」

2030年、AGIの到来が予想される未来において、「何にも追われることなく、ただ美しく咲く」というビジョンが本当に実現できるのか?そんな希望とも問いとも言えるテーマを頭出しとして提示しました。(が、この伏線は回収しきれず時間切れに…。またぜひ次の機会に!)
🧠 PwC 奥野和弘先生
奥野先生からは「AI進化の現状と今後」について、技術的背景の整理と社会的インパクトの大きさを、非常にわかりやすく解説していただきました。 こうした視座でAI進化を俯瞰できる機会は意外と少なく、参加者からも「とても貴重だった」と多くの声が寄せられました。
特に、フィジカルAIにより“現実世界での実行可能性”が飛躍的に広がっている点が印象的でした。
AIはどこまで自律できるのか?
人間はそのとき、どの方向へ進化するのか?
AIによって生まれる“自由時間”を私たちはどう使うべきなのか。 そして、「直感」「遊び」「失敗」「身体性」など、非合理な人間性が持つ意味について、今後ますます問われていくと感じさせられました。
🎨 スタートバーン 施井泰平さん
施井さんからは、「アートが“時間”によって価値を深めていく存在である」という、私たちがつい見過ごしがちな視点を提示していただきました。
それを踏まえて構築されたマーケットの特殊構造などを知ることもできました。アートは「通時的」なものであって、作品制作の5W1Hと時代を超える普遍性の有無こそが重要である、と理解できる、非常に示唆に富んだ内容でした。
特に印象的だったのは、非中央集権的なデータ管理システムであるNFTの考え方です。
これは私自身が最近考えている、雇用の構造的シフト…… 「構造に基づいた労働」から「関係性に基づいた参加」へ。 つまり、ドゥルーズ&ガタリが説いた“リゾーム的”(言い換えるなら“寅さん的”)な在り方~DAO的ネットワーク社会への転換に、正に通じる話でした。 ここは個人的にも、また深掘りして語り合いたいテーマです。
🎵 SIGH 川嶋未来さん
川嶋さんからは、テクノロジーが人間の創作や鑑賞に与える影響について、刺激的なお話をいただきました。
- なぜ、極初期のレコードプレイヤーには「自分で録音する」機能があったのに、それが失われてしまったのか?
- なぜ、歌声にビブラートをかけるようになったのか?
- なぜ、かつて忌避されたドラムマシンが受け入れられるようになったのか?
こうした問いを通して、音楽の歴史においてテクノロジーが果たしてきた役割を浮かび上がらせてくれました。私自身、メタリカのNapster問題などを思い出しながら聴いていました。会場の参加者全員が、食い入るように耳を傾けていたのが非常に印象的でした。
音楽とテクノロジーの交差点を再考する上で、構造的な文脈から“AIによって音楽(芸術)が変わること”を捉え直す、極めて本質的で、価値の高い内容だったと思います。
そして今、AIによって「音楽が“与えられる”ものから、再び“自ら創る”ものへと戻っていく(あるいは進化していく)」としたら…… そこに広がるのは、今とはまったく異なる音楽市場、そして人間の表現のあり方なのかもしれません。
🤝 参加者との「対話」
そして最後には、来場者の皆さんとのリアルな対話の時間。 目と目を合わせ、呼吸を感じながら言葉を交わすことで、空間の熱量が一段と高まるのを実感しました。
オンラインでは得られない「同じ空間を共有する価値」。まさに今回のイベントが実現したかったのは、こうした“ライブな知の交差”だったのです。
この対話セッションの内容は、その場にいた方にこそ深く刻まれる「宝物」だと感じたため、あえて詳細は控えさせていただきます。 ただひとつ確かなのは、AIの進化、アートの可能性、そして「これからの人間」のあり方に至るまで、 参加者全員で本質的な問いを共有できた時間であった、ということです。
活発なご質問を多数お寄せいただき、ありがとうございました!
ありがとうございました!
アンケートも、「写真を撮る」という行為も、すっかり失念してしまい…後悔の念しきりです。
進行の不手際や至らぬ点も多々あり、ご迷惑をおかけしました。そもそも、どう考えても1時間半で終わる内容ではなかったわけですが、それも、実は初めからわかっていました(笑)。
終了後、登壇者の皆さんとも 「これ、一晩かけても終わらないよね」 という話で盛り上がったほどです。
でも今回は、“何らかの正解(解)を提示する”のではなく、 「問いを持ち帰っていただくこと」自体を目的とした場でした。 ですので、それでよかったのだと、今は心から思っています。
AI時代において、人間に求められるものとは何か。 私は、それが「不完全性」や「揺らぎ」、そして「失敗を恐れずに踏み出すこと」ではないかと考えています。なぜなら、そういったものこそが“人間特有のもの”であり、 AIには簡単に模倣できない部分だからです。
そういう意味では、今回は「AIによる完璧な仕切り」とは対照的な、 “人間らしさ全開のグダグダ感”をお届けできたのでは…などと、言い訳しておきます(笑)
いずれにせよ、オンラインではなかなか実現できない、 「リアルな対話の場」が実現できたことは、とても大きな意味があったと思っています。もちろん、オンライン実施の可能性についても今後模索していくつもりです。 次回はまた違った形になるかもしれません。
ご意見・ご感想は、特設サイトの「質問」欄にて引き続きお待ちしています。 また、もし当日お写真を撮っていた方がいらっしゃいましたら、ぜひシェアしていただけたら嬉しいです。
■イベント特設サイト「Preparing for AGI」
またお会いできる日を楽しみにしています! 本当に、ありがとうございました!
BBDF 藤本