本日届き、一気に読み終えました。あの著『哲学なんていらない哲学』(Amazonリンク)。
率直に言って、これは「有名タレントが書いた本だから」という軽い理由で手に取るべき本ではありません。読む側にも覚悟が必要な一冊だと感じました。
私は彼女がゆるめるモに所属していた頃から知っているつもりでしたが、この本に綴られた幼少期の壮絶ないじめ体験や、「周りと違う」という理由で傷つき続けた過去は、読んでいて神経がすり減るほどの痛みを伴いました。
その赤裸々さは、読者の心を容赦なくえぐってくるものでした。
「復讐」を破壊ではなく“創造”として生きるということ
最も衝撃を受けたのは、彼女の原動力が「復讐」にあり続けているという事実です。ただし、その“復讐”は一般的に想像されるような破壊的なものではありません。
彼女の復讐は、自分を高めることで世界に証明するための復讐です。
自分を傷つけてきた人間に対して、相手を蹴落とすのではなく、「自分の表現で世界を変える」という形で復讐を遂げようとする。この姿勢に、私は強烈な希望を感じました。
知識ではなく“実体験”から立ち上がる哲学
さらに驚かされたのは、彼女の哲学が一切の知識や前例に依らず、すべて実体験から構築されているという点です。
「知らないことは悪ではない」
「知識は時に縛りになる」
そう断言する彼女は、哲学書を読まずとも、歴代の哲学者と少なくとも「問いを立てる」という意味で同じ“出発点”に自然と立っているのです。経験を意味づけ、言語化し、自分の言葉で世界を捉え直すその姿は、まさに哲学の原点そのものです。
手っ取り早く答えを求めがちな現代において、「自分の体験こそが哲学であり気づきである」という彼女の姿勢は、強烈なオルタナティブとして響くものであると言えます。
「普通」「常識」「正解」──すべての前提を疑うという覚悟
この本で彼女は、「普通とは何か」「常識とは何か」「正解とは何か」といった、誰もが無意識に受け入れている前提をひとつずつ疑い、向き合い、自分なりの答えを出していきます。
「外れ者」として生きる覚悟。
「できない」自分を抱きしめ、肯定する力。
そして、経験を原体験化し、言語化し、自分の言葉で語る強さ。
その前では、世の中の偽善や欺瞞など、通用するべくもありません。
哲学とは“違和感の言語化”である
哲学とは、哲学史を暗記することではありません。誰かを説得するための理屈でもありません。
抱いた違和感に蓋をせず、言語化し、前提を疑うこと。
あのちゃんはそれを、学問ではなく“生き方”として実践しています。だからこそ、この本は「哲学」という言葉のイメージを根本から揺さぶってくるものとなっています。
新しい哲学の時代の到来を告げる一冊
タレント本という枠を軽々と飛び越え、今また「哲学の時代」が始まることを、予感させてくれる一冊です。
知識ではなく、経験から立ち上がる哲学。
正解ではなく、問いから始まる哲学。
他人の言葉ではなく、自分の言葉で世界を捉え直す哲学。
この本は、その新しい時代の幕開けを力強く宣言するものである。私はそう感じています。
人間×AI共進化ストラテジスト/HRアーキテクト
藤本英樹(BBDF)

