情報を囲い込み、ありふれた知識を難解な言葉で飾り、綺麗なスライドにして高値で売る――。
その手法が大企業に通用しなくなれば、次は中小企業や地方自治体へ向かう――。
AIの進化によって、顧客の「情報・人材・検証力の非対称性」を利益の源泉としてきたコンサルティング会社が、いま「最後のあがき」を続けている。
「コンサルティングの民主化」などと聞こえの良い言葉を掲げながら、実態は販売先の下方移動にすぎない。民主化とは、本来、顧客の自律を促すことである。情報・人材・交渉力の弱い相手へ販売先を広げることは、支援の拡大ではなく、搾取対象の大衆化である。
顧客を賢くせず、依存させることで利益を得る――。そんな「非対称性ビジネス」を続けるコンサルティング会社は、AI時代において早期に淘汰されるべきだと私は考える。
一方で、AIの台頭を「自己破壊の機会」と捉え、既存事業を壊し、自らの存在意義を再定義しようとしているファームもある。
その代表例が、アクセンチュアだ。
■ アクセンチュアの内省と自己変革
アクセンチュアは、AI時代を見据えた大規模な自己変革に踏み込んだ。従来の Strategy、Consulting、Song、Technology、Operations といった部門区分を「Reinvention Services」へ統合し、「サービス提供側の論理」ではなく、顧客の経営課題を起点とした組織構造へと再編した。
その中核を担うのが、RDE(Reinvention Deployed Engineer)である。
RDEは、顧客企業の現場に入り込み、戦略策定からAI実装、業務変革、成果創出までを一気通貫で担う。戦略コンサルが構想を描き、業務コンサルが要件を定義し、エンジニアがシステムを構築する――そんな分業モデルを前提から問い直す役割だ。
私はかつて同社に在籍していたが、今回の動きには「さすが世界最大手の一角だ」と唸らされた。AIによって従来型コンサルティングが破壊される可能性に対し、「それでもコンサルは必要だ」と言葉で反論するのではなく、必要とされる存在へ自分たちを作り替えることで答えようとしているからだ。
コンサル界の王者が、自ら血を流す覚悟で自己破壊のリングに上がっている。その一方で、他のファームは一体いつまで、昨日と同じビジネスモデルにしがみつき続けるのだろうか。
もちろん、アクセンチュアを礼賛しているわけではない。評価すべきは看板ではなく、既存収益を本当に壊せるかどうかだ。ただ、自らを破壊しようとする姿勢と、自らを守るために顧客を利用する姿勢――その差が、これから論じる構造の核心である。
■ AIが奪うのは「コンサルの仕事」ではない
生成AIは、情報収集、分析、資料作成、ベストプラクティスの整理、さらにはプログラミングの一部まで、驚くべき速さで代替しつつある。
これまでコンサルティングファームが高い報酬を得られた理由の一つは、情報の非対称性にあった。コンサルタントしかアクセスできない情報、コンサルタントしか知らない方法論、コンサルタントしか作れない資料――その「格差」こそが価値だった。
しかし生成AIは、その前提をほぼ崩壊させた。大企業であれば、社内に一定の人材とデータがあり、AIを適切に活用できれば、従来型コンサルの多くを内製できる。
AIが奪うのは、コンサルタントという職業そのものではない。情報格差だけを価値源泉としてきた「知識提供型コンサルティング」の仕事である。
アクセンチュアは、この厳しい構造変化を直視し、「知識を売る会社」からの脱却を図ろうとしている。
■ コンサル業界を襲う「イノベーションのジレンマ」
コンサル業界は、まさにイノベーションのジレンマの只中にある。既存顧客の要望に応え、既存事業の収益性を高め、社内の評価基準に従って合理的に行動するほど、破壊的変化に対応できなくなる。生成AIは、情報アクセス、調査・分析、フレームワーク、資料作成、人月モデル――コンサル産業の価値源泉そのものを破壊しつつあるのだ。
ここで、コンサル会社には二つの選択肢が生まれる。
① AIを既存事業の防衛に使う
AIで社内業務を効率化しながら、その事実を顧客に開示せず、従来と同じ工数が必要であるかのように人月請求を維持する。これはAIを活用しているように見えて、実際には破壊を遅らせているだけだ。
② AIによって自分たちが不要になる可能性を受け入れ、価値を再定義する
既存業務の効率化ではなく、部門区分、職種、評価制度、収益モデルまで変える。自分たちを不要にしかねない技術を、顧客へ実装する覚悟を持つ。
アクセンチュアが踏み出したのは、後者への道である。
■ 自分を変えず、「まだ売れる相手」を探すファーム
前者にしがみつくファームは、サービスの再創造ではなく、販売先の変更を行っている。大企業が従来型コンサルを必要としなくなれば、情報・人材・検証力が不足する中小企業へ向かう。さらに地方自治体へ向かう。
自分たちの提供価値を変えず、既存の仕組みがまだ通用しそうな相手を探し回っている。
理念としての「民主化」は美しい。しかし実態が、大企業向けサービスの小型化と販売先の下方移動であるなら、それは民主化ではない。
単なる情報格差ビジネスの延命である。
■ 顧客の課題ではなく、売りたい「型」から始まる
多くのファームは「オファリング」という標準化されたサービスを持つ。オファリング自体は悪くない。問題は、それにより思考の順序が逆転していることだ。
本来は、顧客固有の課題を理解し、必要な解決策を考え、使えるオファリングがあれば活用する――これが筋だ。しかし実際には、売りたいオファリングが先にあり、それを適用できる顧客を探している。顧客の課題をオファリングに合う形へ加工している。
これでは「問いを解く人」(コンサルタント)ではなく、単に既製品を売る営業に過ぎない。
彼らは「Fit to Standard」「ベストプラクティス」という綺麗事で、顧客固有の強みやこだわりを「非効率」として型へ押し込む。この標準化は効率化の近道であると同時に、平均的な会社になるための最短距離でもあることを認識しなければならない。
彼らが売っているのは「再創造」ではなく、企業固有の競争力を削り、すべてを同じ形へ近づけていく「没個性化プログラム」なのだ。
他社の成功事例を右から左へ流すだけの、そのような「コピペ・コンサル」に、なぜ莫大な金を払わなければならないのか。
■ イノベーションを支援するコンサルが、イノベーションを阻害する
より深刻なのは、コンサル会社が顧客のイノベーションまで阻害する可能性があることだ。
前例のない構想には「実績がない」と反対し、既存のオファリングに収まらないアイデアには「実現可能性が低い」と評価する。そうして顧客から生まれかけた新しい可能性を、既存のつまらない正解へ引き戻してしまう。
イノベーションを支援するはずのコンサルが、自社の収益モデルを守るためにイノベーションを阻害する――これは大きな逆説である。
■ 「情報格差」を固定化する構造
従来型コンサルティングの少なからぬ部分は「非対称性ビジネス」――あえて強い言葉を使えば、「情弱商売」である。顧客との情報格差がなくなった瞬間に価値を失うなら、その会社はコンサルではなく、情報格差依存型の営業会社だ。
私は中小企業や自治体を「情弱」と呼んでいるのではない。むしろ逆だ。中小企業の経営者は、自社の顧客、技術、商流、従業員、地域について、外部のコンサルタントよりはるかに深く理解しているし、地方自治体も、その地域の歴史や住民生活について、外部事業者にはない知識を持っている。彼らに不足しているのは知性ではなく、専門人材と検証時間である。その非対称性を利用する構造こそが「情弱商売」なのだ。
相手の不安を刺激しながら、自社に都合のよいサービスを売り込む商売。最悪なのは、プロジェクトが終わるたびに必要以上の「次の課題」が提示され、永続的にコンサルを雇わなければ回らない依存構造が固定化されることだ。個々のコンサルタントに悪意があるかどうかは、本質ではない。顧客の自立がコンサル側の売上減少を意味するビジネスモデルそのものに、深刻な利益相反がある。
顧客に自立されると困るビジネス構造。支援を受ければ受けるほど、顧客が自分で問いを立て、判断し、変革する力を失っていく。自治体であれば「自治」が失われ、企業であれば「経営」が失われる。横山勲氏の『過疎ビジネス――コンサル栄えて、国滅ぶ』を読めば、その実態がよくわかるだろう。
まさに「コンサル栄えて、国滅ぶ」であり、「コンサル栄えて、経営滅ぶ」なのだ。
■ 良いコンサルタントは、自分を不要にする
AI時代でも、外部者の価値自体は消えないだろう。異なる業界や技術の知見を結びつけ、経営者との対話を通じて、まだ言葉になっていない課題を見つける役割は、依然として重要だ。
ただし、その価値の重心は、「答えを知っていること」から、顧客とともに新しい問いと仕組みを生み出すことへ大きく移った。オファリングへ顧客を合わせるのではなく、顧客とともに「自分の頭で考える」力が必要となってきているのだ。
「良いコンサルタント」と「情弱商売」を分ける基準は、極めてシンプルだ。
支援が終わった後、顧客は以前よりも自分で考え、判断し、変革できるようになっているか。
良いコンサルタントは、顧客が自分で考え、判断し、変革できる状態を残す(少なくともその支援領域については、コンサルがいなくても前へ進める状態を作る)。
悪いコンサルタントは、顧客の不安を増幅し、外部依存を固定化する(コンサルがいなければ判断できない状態を作る)。
コンサルティングの価値は、資料の枚数でも、導入したフレームワークでもない。顧客の自律性をどれだけ高めたか、である。
■ コンサルタントの良し悪しを見抜く「6つの質問」
とはいえ、契約してから気づいたのでは遅すぎる。これからコンサルを活用しようとしている中小企業の経営者や自治体の担当者は、次のような質問を投げかけてみるとよいだろう。
1.「支援終了後、当社には何が残りますか?」
「報告書」「システム」「成果物」しか答えられないなら、不十分だ。
顧客に残すべきは、次の問題を自分たちで解ける能力である。
2.「御社がいなくても運用できる状態を作れますか?」
移管計画と人材育成を具体的に説明できれば合格。そのコンサルタントは顧客の自律を考えている。一方、「長期的な伴走が必要」と契約継続の話にすり替え、支援の終了条件や移管計画を示せないなら、依存を売っている可能性が高い。
3.「当社に適さない場合、導入しない結論も出せますか?」
売らない選択肢を持てるか。本物のコンサルタントは、自分の売上より顧客にとっての正しい判断を優先する。何を聞いても自社のオファリングへ着地させるなら、それは単なる営業だ。
4.「当社固有の事情をどう理解しますか?」
他社の成功事例やベストプラクティスの説明を始めるのか、こちらの歴史や失敗について質問を返してくるのか。見ているのが顧客なのか、自社の型なのかが分かる。
5.「このプロジェクトが失敗したと判断する基準は何ですか?」
導入件数、会議回数、研修参加者数、資料の納品といった活動量ではなく、経営成果で語れるか。失敗を定義できないプロジェクトは、成果が出なくても「一定の示唆が得られた」で逃げられる。
6.「AIを使えば内製できる業務はありませんか?」
AIで代替できる領域を正直に切り分けられるか。顧客に返せる仕事まで抱え込もうとするなら、その会社が守っているのは顧客の利益ではなく、自社の売上。
――重要なのは回答の言葉ではなく、顧客自律性を中心に据えた一貫した姿勢である。良いコンサルタントは、自分の売上を増やす方法だけでなく、自分がいなくても顧客が前へ進める方法を考える。
■ 自己保存か、自己再定義か
アクセンチュアのRDE構想が成功するかはまだ分からない。BANIの世界では、どんな構想も不確実だからだ。Reinventionが新しい名前をつけた大規模人月ビジネスに堕する可能性もあるだろう。
それでも、既存事業を破壊しかねない変革に踏み込み、戦略・業務・テクノロジーの境界を越えて成果創出まで責任を持とうとする姿勢は評価すべきだ。
問われているのは、テクノロジーへの対応力ではない。
自らを不要にする技術を、顧客のために使えるか。
既存の商品を守るのか、存在意義を作り直すのか。
顧客を自律させるのか、依存させ続けるのか。
コンサルティングという仕事の倫理と哲学、自らを作り変える覚悟だ。
顧客の非対称性を利益に変える会社。
オファリングを売るため、顧客の課題を都合よく作り変える会社。
「民主化」の名の下に、情報格差の残る市場へ逃げ込む会社。
そんなコンサルティング会社は、顧客の変革を支援する存在ではない。顧客の弱さに依存し、その弱さを温存することで存続する存在だ。AI時代には、もう必要ない。
顧客を賢くしないコンサルに、もはや1円の価値も、居場所もない。
自己保存か、自己再定義か。
AI時代のリングに上がる覚悟がないのなら、静かに退場してもらうしかないだろう。
藤本英樹(BBDF)

