東京は最終防衛ライン、地方は未来実験場へ

人口減社会のリアル戦略「生活ラストマイル」

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日本の人口減少は、最早歯止めが利くレベルではありません。

戦略なきまま進む「移民国家化」

日本は今、静かに「移民国家化」「外国人依存型社会化」への道を歩んでいます。

  • 総人口減少幅:▲55万人
  • 外国人増加幅:+35万人

つまり、日本の人口減少の約65%は、外国人流入によって“相殺”されている状況です。労働力不足対策として「外国人頼み」が、実質的に進行しているのです。

にもかかわらず、この状況に対する国家戦略がほとんど議論されていない。これは極めて深刻な問題です。

現実として、もはや外国人抜きに都市も産業も維持することは困難でしょう。しかし、社会統合、文化共生、法制度、教育、地方誘致戦略などは、依然としてバラバラのままです。

しかも、外国人増加は都市部(特に東京圏)に集中し、地方消滅リスクはむしろ加速しています。日本型の雇用慣行や社会保障制度は、日本人を前提に設計されており、外国人労働者の増加によって制度のほころびが顕在化する可能性は極めて高いと言えるでしょう。

このまま制度整備が遅れたまま外国人労働者数だけが増えれば、摩擦や治安悪化、不安定労働層の拡大など、様々な社会問題が今以上に噴出するのは時間の問題です。国家戦略として、今こそ明確な意思決定が求められています。

医療・介護・金融モデル崩壊の危機

「75歳以上人口の爆増」と「15〜64歳人口の停滞」は、日本社会がこれから直面する医療・介護・金融モデルの崩壊を示唆しています。

  • 75歳以上人口の増加は+70万人
  • 生産年齢人口の減少は▲22万人

日本の人口動態は、もはや完全に「高齢者ボーナス社会」(=人口増加は高齢者のみ)に突入しています。

医療では、高齢者医療費の増大が現役世代の負担をさらに圧迫します。

介護では、フィジカル・インテリジェンス(介護支援ロボットなど)の普及が遅れている日本では、外国人労働力への依存が正直避けられない状況です。多文化対応は必須になります。

金融では、高齢者資産の取り崩しフェーズに入っており、金融機関の収益モデル再構築が急務です。

東京圏「一極集中」は“最終防衛ライン”へ

  • 東京圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)の人口は微増
  • 地方は「持続困難エリア」への転落が進行

もはや地方創生=人口維持という時代は終わりました。今求められているのは、「縮小都市のマネジメント」への大胆な政策転換です。

コンパクトシティ化、そしてテクノロジーによるサービス維持(ドローン配送、遠隔医療など)の推進が急がれます。手遅れになる前に。

「生活ラストマイルインフラ」の発想

「ラストマイル」とは本来、物流業界で商品を顧客の玄関先まで届ける最終工程を指す言葉です。ですが、人口減少・高齢化・都市集中が進む中で、いま問われるべきは「生活ラストマイルインフラ」とも呼ぶべきものでしょう。

つまり、人間が生活を営むうえで不可欠なサービスを、最後の一人にまで届けるためのインフラ・仕組み・サービス群。「暮らしを支える最後の1歩」、これを誰がどうやって届けるのか?

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医療、買い物・物流、公共交通、金融・行政、教育・学習、介護・福祉――。これら全てが、どこに住んでいても届く社会をいかに実現するか。この発想転換が必要です。

「テクノロジー×人間」によるインフラ再設計

担い手は「テクノロジー×人間」(遠隔・自動・移動・小型化)のハイブリッドでしょう。具体的には、例えば次のような取り組みが求められます。

  • 医療:診療所閉鎖 ➤ オンライン診療、移動診療車、ドローン薬配送
  • 買い物:商店消滅 ➤ 移動スーパー、無人店舗、ドローン配送
  • 公共交通:路線バス廃止 ➤ デマンド交通(オンデマンドバス)、自動運転カーシェア
  • 金融:銀行・ATM撤退 ➤ デジタルバンキング、地域通貨、出張窓口

「人口がいる限り、その地域は消滅しない」のではありません。

これからの論点は「暮らしを届けられる限り、人は住み続けられる」かどうか、です。

海外の事例に学ぶ「生活ラストマイル」

例えばこのような事例が確認できます。

  • ノルウェー:ドローン薬配送(Aviant社)
    ノルウェーの離島や山間部への医薬品ドローン配送実験が、Aviant社によって行われています。国家支援も受けています。Aviant社公式サイト
  • カナダ:遠隔教育プラットフォーム(Connected North)
    カナダの先住民居住区では、Connected NorthがVRを活用した遠隔教育プラットフォームを提供し、文化継承教育も実施しています。Connected North公式サイト 
  • オーストラリア:リモートロボ薬局(Pharmacy Automation)
    オーストラリアでは、薬局の自動化が進んでおり、ロボットによる調剤や薬の管理システムが導入されています。Pharmacy Automation 

また、日本においても、災害時や支店のない地域での金曜サービス提供を行う、移動式の金融車両が開発・提供されています。オオシマ自工

これらの事例は、人口減少・高齢化が進む地域において、生活インフラを維持・提供する取り組みの最前線です。国として、最大限の補助・育成・普及支援が不可欠です。

人口減を前提としたインフラ発想へ

「生活ラストマイルインフラ」とは、人口減でも、最後の1人まで暮らしを支えるための「次世代インフラ」の考え方です。

テクノロジー(DX・AI・ドローン・遠隔操作・自動運転など)は、その実現を支える武器です。これは日本にとって“最後のチャンス”とも言えるでしょう。

地方創生の本当のカギは、「工場誘致」でも「UIターン促進」でもありません。それは「未来の生活実験場として、地方をアップデートすること」です。

これこそが、地方生き残りのリアルな戦略になってくるでしょう。

BBDF 藤本