BANIを提唱した未来学者ジャメイ・カシオ氏は、この絶望的とも言える現代において、「安定した時代に考案された誤ったリーダーシップモデル」に固執することは、混乱を深めるだけだと指摘しています。
その「誤ったリーダーシップモデル」とは、つまり「精神的に強く、まともで、自信にあふれた、頼れるリーダー」といったイメージのことでしょう。
では、BANI時代に求められるリーダーシップとは、どのようなものなのでしょうか。
タフツ大学医学部やハーバード大学医学部で教鞭を執るナシル・ガエミ博士は、非常に興味深い研究を行っています。
ガエミ博士は、「正気(Sanity)は良い結果を生み、狂気(Insanity)は問題である」という、私たちが無意識に共有している前提に疑問を投げかけました。そして、歴史上のリーダーたちを分析した結果、メンタルヘルスの問題を経験した人物には、共感力、現実主義、回復力、創造性が高まる傾向があることに気づいたのです。不安定な状況下では、双極性障害など破壊的なメンタルヘルスの問題を経験したリーダーほど、より高い回復力を示し、明確かつ粘り強く方向性を保つことができるといいます。
彼はこの現象を「抑うつリアリズム(Depressive Realism)」と名づけ、「うつ病を経験した人は、そうでない人よりも、世界をより正確に見ていることが多い」と結論づけています。
実際、BANI時代を生き抜くための行動指針「Positive BANI(BANI+)」の下記各要素は、うつ病経験者の特性と驚くほど一致します。
- Bendable(しなやかな):メンタルヘルスの問題と向き合ってきた人は、混乱を予測し、ショックに耐える準備ができています。
- Attentive(気配りのある):不安やうつを経験したリーダーは、現実感と共感力が高まり、微細な兆候にも敏感になります。
- Neuroflexible(神経の柔軟な):躁状態を経験した人は、創造性を育み、連続的な思考や予測可能な結果を超えて物事を見る力を持ちます。
- Interconnected(相互接続の):型にはまらない思考に慣れたリーダーは、周囲の状況を多角的に捉え、柔軟に判断する力を備えており、それが競争上の優位性につながります。
もちろん、リーダーには精神的・肉体的な健康が求められます。しかし、そうした課題を乗り越えてきたリーダーにこそ(困難に直面したことのない人よりも)、BANIの混沌とした現代に適応しやすい可能性があるのです。 そもそも、困難に直面したことのない人は、本当に「強い」と言えるのでしょうか?それとも、ただ単に厳しい現実を直視していないだけなのでしょうか?
日本の俳優であり、文筆家・画家でもあるリリー・フランキーさんは、雑誌『QJ(クイック・ジャパン)』のインタビューで、こんな名言を残しています。
「鬱は大人のたしなみですよ。」
「2~3年ちょっと鬱状態になって仕事も滞った人のほうが、まだバネがつくと思う。」
これからの時代、リーダーに求められるのは、打たれても倒れない「強さ」ではなく、打たれて倒れてもまた立ち上がる「レジリエンス(しなやかさ)」です。
理解不能(Incomprehensible)な時代には、常識を超える新しい適応型リーダーシップ戦略が必要なのです。

※投影資料は変更となる場合があります。
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「この先どうなるのか、まったく読めない。」
多くのリーダーが抱えるこの感覚を体系化したのが「BANI」。
Brittle(脆弱な)
Anxious(不安な)
Nonlinear(非線形な)
Incomprehensible(理解不能な)
そして、この混沌を生き抜くための行動指針が「Positive BANI(BANI+)」。
Bendable(しなやかな)
Attentive(気配りのある)
Neuroflexible(神経の柔軟な)
Interconnected(相互接続の)
このふたつの新しいフレームワークを、ゼロから丁寧に解説。
これからのリーダーシップの本質を、くっきりと浮かび上がらせます。
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