吉本興業のお笑い芸人、藤井隆さんの『Music Restaurant Royal Host』という、まさに唯一無二のアルバムがあります。この一枚、ただの“おふざけ企画盤”だと侮るなかれ。聴いてみればわかります。いや、触れれば、もっと伝わってきます。(Amazonリンク)
私が手にしている初回限定盤は、なんとロイヤルホストのメニューブックを再現した特殊ジャケット仕様。あの見慣れたロイホの世界観が、音楽作品として目の前に立ち現れます。

藤井さんは語っています。「いつか大好きなロイホとコラボしたかった」。
そして奇しくも、2021年/2022年が、ロイヤルホスト50周年と藤井隆50歳のダブルアニバーサリー。この偶然が、コラボという“新結合”を呼び込みました。
藤井隆は“新結合の人”である
シュンペーターが「イノベーションとは新しい組み合わせ(new combination)である」と言ったのは、経済の話だけではありません。芸能の世界にも、文化の継承にも、創造の本質があるとしたら、それはやはり「愛するものを、思いもよらぬ形でつなぐ力」にあるのではないでしょうか。
藤井さんが紡いできた数々の“新結合”を見てみましょう。
- レイザーラモンRGに、カルロス・トシキを歌わせる(「アクアマリンのままでいて」)
- フットボールアワー後藤さんに、本田美奈子をカバーさせる(「悲しみSwing」)
- ファミレス×音楽アルバムという誰も思いつかない世界観を構築(本作『Music Restaurant Royal Host』)
- お笑い芸人として、元アイドル乙葉さんと衝撃の結婚も実現
そしてなにより、自身がこよなく愛する“CITY POP”を、今の時代に再び呼び起こす仕掛け人でもあるのです、彼は。
しかも、これらすべてが「愛」から始まっている。これが肝です。ビジネス発想ではない。バズ狙いでもない。ただただ、自分が好きなものを“つなげたい”という、少年のような純粋さ。それが藤井さんの素晴らしさです。
カバー曲に込められた「継承」の意志
このアルバムには、藤井さんの審美眼が光る3つのカバー曲が収録されています。
- 「We Should Be Dancing」(KAKKO=鈴木杏樹):90年UKデビューの伝説的な一曲(2曲目)
- 「アイリーン」(安部恭弘):日本AOR屈指の名曲を、2020年代に再び響かせる選曲センス(3曲目)
- 「Chocolate」(レオ今井):2000年代の都会派ロックを、ロイホ空間に溶け込ませる試み(10曲目)
特に「アイリーン」を選んだことに、思わず胸が熱くなりました。安部恭弘さんの『SLIT』といえば、80年代J-AORの至宝とも言える作品ですが、決して万人に知られているわけではありません。しかし、藤井さんはそこに光を当て、「語り継ぐ」ように歌っているのです。
藤井隆という人は、芸能界の“橋渡し人”であり、“記憶のキュレーター”だったのです。
堀込泰行という才能との交差
オリジナル楽曲ももちろん素晴らしいのですが、特筆すべきは以下の2曲における元キリンジ・堀込泰行さんとの邂逅です。
- 「ヘッドフォン・ガール~翼がなくても~」(4曲目)
- 「東西南北」(9曲目)
「ヘッドフォン~」は堀込節全開のメロディーと歌詞がたまりませんし、藤井さんも歌詞を共作した「東西南北」はふたりの感性が交差する感じが大変ユニークです。
いずれも藤井さんが“自分の色”に染めあげています。一聴すれば、「ああ、これは誰にもできない歌い方だ」と感じるほどです。“借りてきた歌”ではなく、“咀嚼して血肉化した作品”になっています。彼の音楽愛が、伝わってきます。
“愛”が未来を変える
そして忘れてはいけないのが、藤井さんの人生のパートナー、乙葉さんの存在です。彼女もまた、単なる“元アイドル”という枠に収まりきらない音楽的才能の持ち主です。TVで見た、ピアノを弾きながら歌う彼女の姿(20年くらい前?)を、私も未だに忘れられません。
透明感のある歌声と、どこか懐かしさのあるメロディライン。彼女が遺したいくつかの楽曲を聴けば、藤井隆さんが惹かれた理由も納得です。まるで「欲望渦巻く芸能界に咲いた一輪の花」のような存在感。
藤井さんが紡ぎ出す“継承と融合”という美学は、きっと乙葉さんとの日々にも支えられているのでしょう。そして、藤井隆さんが私たちに教えてくれるのは、たったひとつの真実かもしれません。
「自分が愛したものを語れ。そしてつなげ。残せ。」
芸能界は移ろいが激しく、文化も記憶もあっという間に過去になる世界です。しかし、そこに“愛”があれば、未来は変えられるのです。
CITY POPがそうであったように。
ロイホがそうであるように。
ロイヤルホストの“愛”
藤井隆さんがこの作品で結んだ“ロイホ愛”は、決して一方通行なものではありませんでした。実はロイヤルホストという企業そのものが、技術を単なる効率化の手段としてではなく、「人の想いをつなぐ手段」として、“愛”のために導入してきた背景があるのです。
このような取り組みの根底には、「お客さま」への“愛”と、「従業員」への“愛”がしっかりと息づいています。つまりロイホとは、技術と人間性を“愛”によって編集してきた場所なのです。
今日もロイホで1日を終えて
今日もロイヤルホストでコーラを飲みながら、藤井さんの歌声に耳を傾けていました。
“日常”の象徴であるロイホと、“日常”の呼吸としての音楽。そのふたつを愛によって編み直し、新しい意味を与えたのがこの『Music Restaurant Royal Host』というアルバムなのです。
あなたのテーブルにも、ぜひ一皿、いかがでしょうか?
BBDF 藤本 ※現時点ではロイホとも吉本とも取引関係は一切ございませんw