あなたの親を守るのは、AIかもしれない

Grokに学ぶ詐欺社会の防衛戦

· Social Issues

気づいてますか?そのメール、「詐欺」です

「アカウントが乗っ取られました」「未払いがあります」…こんな詐欺メールが、毎日のように届きます。

最近ではフィッシング詐欺の手口もどんどん巧妙化しており、一見すると本物そっくりのデザインや文章で、信頼できる企業を装うケースも少なくありません。

幸いにも私たちは、迷惑メールフィルターを設定していたり、「なんとなく怪しい」と判断する経験値があることで、大抵は被害を免れていますが、みんながそうとは限りません。

特に、高齢者やデジタルに不慣れな層は、日常のなかでこうした詐欺に晒されやすく、実際に被害に遭うケースも後を絶ちません。おばあちゃん子だった私は、お年寄りを騙すような詐欺には、本当に怒りが湧いてきます。

「そんなやつ、AIに即バラされちまえ」とさえ思うのです。

参考:「よくある詐欺メールの手口」ベスト3

  1. 偽の宅配業者通知(例:再配達のご案内リンク)
  2. 金融機関・クレジットカード会社を騙る警告メール
  3. Apple・Amazon・楽天などを装った“アカウント異常”通知

詐欺メールの被害額

まずは現実を見てみましょう。2024年、日本で公表された詐欺関連の被害額は以下の通りです:

  • クレジットカード不正利用:約541億円(2020年の2倍以上)
  • インターネットバンキング詐欺:約87億円

合計で630億円近い損害が、わずか1年で発生しています。(出典:一般社団法人日本クレジット協会警察庁

しかし、これはあくまで“氷山の一角”でしょう。被害に気づかず放置しているケースや、被害に遭ったことを恥ずかしくて誰にも言えないケース、少額だから諦めて報告しないケースもあるはずです。

これらを含めると、実際の被害額は公表の倍近く、1,000億円を超えている可能性もあるのではないでしょうか。

Grokに学べ!「嘘を見抜くAI」の公共応用

SNSの世界では今、「Grok(グロック)」というAIが注目を集めています。これはX(旧Twitter)に実装された、“リアルタイムファクトチェックAI”のような存在です。

Grokは、投稿された情報の裏を即座に取り、「それ、間違ってますよ」と、補足や反証を提示してくれます。つまり、「適当なことやウソを書けばすぐにバレる」時代になってきたのです。

これは単なる機能ではなく、“AIが真偽を返す”という新しい文化の誕生でもあります。テクノロジーが、公共の真実性を支える“装置”になりつつあるのです。

このGrokのような仕組み、メールに応用できないでしょうか?

「このメールは詐欺の可能性があります」
「このリンク先は過去にフィッシングで使用された履歴があります」

・・・そんな一文が表示されるだけで、救われる人がどれだけいることでしょう。

ちなみに最近は、「文字起こしAI(議事録AI)」もよく使われていますが、あのツールにGrokのような“真偽判定機能”が加われば、怪しい営業トークや詐欺的話法、詭弁などを即時可視化(例えば赤字表示)することも可能になるはずです。

「見抜ける人を強化するAI」ではなく、「見抜けない人を守るAI」こそが、これからの公共には必要なのです。

AI×公共サービスとしての“詐欺検出”

現在、こうした詐欺対策はGoogleやセキュリティソフトなど、民間企業の努力に大きく依存しています。たしかにGmailには優れた迷惑メールフィルターがありますが、それで守りきれるのは、ある程度リテラシーのある人だけです。

本当に守るべきは、AIにアクセスできない人たちなのではないでしょうか?

そう考えると、国や自治体が主導して、“全国民を対象とした詐欺フィルター”を提供するような公共インフラが必要です。メールだけでなく、郵便、電話(自動音声詐欺含む)、SNS、チャットアプリなど、あらゆる“入り口”にAIを配置し、危険を検知・警告する仕組みです。

謂わば「Grok for Public」のような構想が、今こそ求められているのです。

補足:高齢者向けに役立つセキュリティ習慣

  • 不明な宛先からのメールは開かず削除!
  • リンクをクリックせず、公式サイトに直接アクセス!
  • 少しでも不安を感じたら、家族や地域の相談窓口に連絡!
  • スマホには詐欺ブロックアプリを入れておくのが吉!

AI社会の本質は「“見抜けない人”をどう守るか」

AIは、残念ながら“詐欺師”の武器にもなり得ます。しかし同時に、“詐欺から人を守る盾”にもなれるのです。重要なのは、そのAIを誰が持ち、誰のために設計するのか、です。

“見抜ける人”だけが生き残る社会で良いとは思えません。“見抜けない人”をも包摂する技術設計が求めらます。“見抜けない人”を守ることのできるAIこそが、社会にとって真に価値のあるAIなのではないでしょうか。

BBDF 藤本