東大松尾研の講座を修了し、無事に終了証を受け取ることができました\(^▽^)/

AI時代における経営戦略の在り方を体系的に学ぶことができ、大変大きな刺激を受けました。
まず、AI開発の歴史とトレンドの把握から始まり、生成AIの技術進化と未来展望、日本企業と海外企業の比較、ハルシネーションや再現不可性といったAI特有のリスクに対するガバナンスの重要性、そして電力供給のみならずホリスティックに考慮すべきデータセンターのサステナビリティ問題など、幅広い視点からAIと社会の関係を学びました。これにより、AIがビジネスを含む社会変革にいかに有効に作用するか、その全体像をつかむことができました。
- 日本と海外におけるAIに対するスタンスの違いには、強い危機感を覚えました。日本企業が生成AIを業務効率化の手段程度に捉えている一方、米国企業はより大きな産業変革の起点と位置付けています。日本がAIに対して受動的な立場(あるいは過小評価する姿勢)のままであれば、低下し続けている日本の一人当たり労働生産性順位が向上する見込みは極めて低いでしょう。(参考リンク)
- また、AI分野では「守るべき決まり」がまだ確立されていないため、ガバナンスを「与えられるもの」ではなく「皆で創っていくもの」と捉える必要があります。複雑化する規制環境を、自分ごととして柔軟にキャッチアップしていく姿勢が求められます。
次に、実際にAIを活用している先進企業の方々から、導入の現状と今後の展望について直接学ぶことができました。具体的には、AI時代におけるマーケティング手法の変化、いわゆるPhysical Intelligence(ロボティクス)の現在地と今後の進展、そしてバックオフィス業務における各種ユースケースなどです。
- 先日、「AIに奪われる職業」に関する10年前の予測が大きく外れている、と話題となりました(参考リンク:野村総合研究所による10年前の予測)。これは、AIを「頭脳」と「身体」に分けたとき、前者の進化が指数関数的である一方、後者の進化が相対的に遅れていることに起因していると考えます。生成AIの登場により、知的職業こそが先に影響を受け始めており、「なくなる」と予想された肉体労働系の仕事が依然として重要な役割を担っているという現象が生じているのです。
しかし、「身体」部分の進化(Physical Intelligence、所謂ロボティクス)も、時間の問題でAIが担えるようになるでしょう。そして、ここにこそ、日本企業の強みであるハードウェア技術の出番があると考えます。日本の製造業が蓄積してきたデータやノウハウを最大限に活用できれば、AI時代において大きなチャンスが訪れるはずで、非常に期待しています。 - また、現在の10代はAIに対して、IQのみならずEQすら感じ始めており、AIが「人間の感情に寄り添う存在」となりつつあります。「何を言っているか分からない」大人よりも、寄り添ってくれるAIに共感する――そんな世代が登場しているのです。この変化により、「感情労働はAI時代でもなくならない」という従来の定説も見直されることになるでしょう。すでに広告が「邪魔な存在」と化している中で、マーケティング手法の再定義と顧客体験の多様化への対応は、今後ますます重要になります。
さらに、「AI経営のEnabler」として、AI時代における人材育成と共創戦略について、具体的な事例をもとに学ぶことができました。
- AI時代に必要となる、数値だけでは判断できない「価値判断力」や、「問いを立てる力」(プロンプト設計力)を育むためには、そうした能力を重視する企業文化への変革が必要です。ところが、日本企業の多くは「組織カルチャーを戦略的にマネジメントする」という発想すら持っていません。一方、欧米企業ではカルチャー・マネジメントやチェンジ・マネジメントを担う専門部署が存在しています。機関投資家が重視するポイントが有形資産から無形資産に移る中、「人的資本経営」に本格的に舵を切らなければ、日本企業は変われないまま淘汰されてしまう可能性があります。コンフォートゾーンから一刻も早く抜け出す必要があり、カルチャー/マインドの変革は今後も継続して注力すべきテーマだと考えています。
- また、「原体験」の重要性も再認識しました。AIが持ち得ないものの一つが、人間の「原体験」です。豊かな原体験を通じて個々人には独自の哲学や価値観が育まれ、それが「個性」となります。今後の人材育成では「知識」よりも「原体験」に重きを置く方向にシフトしていくべきだと感じました。また、AI時代におけるスタートアップと大企業の新たな関係性である「スイングバイIPO」の概念など、多くの学びを得ることができました。
この講座を通じて最も印象深かったのは、AI開発の最前線で活躍する研究者の多くが、哲学的な背景を持っていたことです。例えば、松尾教授は幼少期から「自分とは何か」という問いに向き合っており、それを解明する手段としてAI研究に取り組んでいると伺いました。AIを人間が使うものとして位置づけし続けるためには、このような深い内省的思考こそが重要だと強く感じました。AI時代においてこそ、人間はより一層、自らの頭で考え、自身を理解しようとする姿勢が求められるのだと思います。
知らなければ恐れるしかないようなことも、知れば適切に対応できるようになります。ソクラテスの「無知の知」が示すように、真の知は「自分が何を知らないかを知ること」から始まります。
AIの急速な進展により、私たちは今まさに「適応力」を試されているのだと感じます。AGI(汎用人工知能)が登場し、AIが自らAI研究を進めるようになれば、2040年には世界総生産(GWP)が現在の1,000万倍に達するという試算すらあります(※1,000倍ではなく1,000万倍です!)。私たちの想像を遥かに超えた未来が、すぐそこまで迫っているのです。
その未来を明るいものとするためにも、自らの知的好奇心と探究心に蓋をせず、これからも多角的な学びを続けていきたいと考えています。
BBDF 藤本