4年後に起こる?価値観の激変

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レイ・カーツワイル氏の待望の新著『シンギュラリティはより近く』が、遂に先月日本でも出版されました。(*1)

私自身、今年最大のインパクトを受けたのは、氏がSXSW(*2)で行った講演内容です。

その講演で語られた内容は、以下の通りです。

・当初、1秒間に0.0000007回の計算しかできなかったコンピュータが、今では1秒間に650億回の計算を行える。

・コンピュータは指数関数的に進化を続けており、2029年にはAGI(*3)が登場するだろう。

・AGIの登場により、コンピュータ1台で人間ができることは全て模倣し、実行できるようになる。

さらに、次のように述べています。

・AGIの登場を契機に、人類の寿命は飛躍的に伸びるだろう。

・科学技術や医療技術の進歩により、2029年以降、寿命は毎年1年ずつ延びると予測される。

・現代人が500歳まで生きることも可能になるだろう(勤勉でさえあれば)。

「毎年1年寿命が延びる」ということは、実質的に人類に「不老」が訪れることを意味しています(しかも、4年後という極めて近い将来に)。

この「究極的なパラダイム・シフト」、すなわち「人類総サザエさん一家」のような状態ーーつまり、波平が勤勉ならあと400年も働ける時代の到来ーーが、もうそこまで迫っているのです。

実際にどこまで寿命が伸びるかは別として(例えば、iPS細胞研究の山中教授は500年説に懐疑的な様子を見せています)、少なくともこのような予測が存在する事実は正しく認識されるべきです。さらに、それを念頭に置いた各種制度の構築も、検討すべき段階に来ているのではないでしょうか。

少子高齢化問題や人口減少問題、年金問題など、現在の議論の前提がすべて崩れることになる訳ですから。これにより、私たちの社会構造や制度設計に大きな変革が求められるでしょう。

AIの進化は、カーツワイル氏の予測をも上回るペースで進んでおり(実際、そのために彼は本書の出版を1年遅らせたと言われています)、私たちの想像をはるかに超えたスピードで社会は変わり続けることになります。

そのため、未来を予測し、そこから逆算して備えることがますます重要になってきます。問題を先送りしている場合ではありません。

例えば、我が国の人口減少問題はすでに何年も前から予測されていたにもかかわらず、長い間「見て見ぬふり」(問題の先送り)をしてきた結果、その対策は完全に後手に回っています。

「起きてから」ではなく、「起きる前に」。この観点から先手を打ち、必要な制度を構築していく方式に、舵を切るべきではないでしょうか。

BBDF 藤本

*1:シンギュラリティ=「技術的特異点」。技術的な進化が指数関数的に続く中で、AIが人間の知能を大幅に超越する時点のこと。

*2:米オースティンで毎年3月に開催される大規模イベント。87年に音楽イベントとして始まり、98年からは創造的な技術を持つ新興企業が技を競うインタラクティブフェスティバルを併催するように。07年のTwitter社の受賞により世界から注目されるようになりました。

*3:Artificial general intelligence=汎用人工知能。特定の作業だけでなく、人間によるあらゆる知的作業を学習、理解し実行可能なAIのこと。